私の兄は、アイドルです。
「……なんで……
入り口のセキュリティー通れたの……?」
……このマンションのセキュリティーは、この辺じゃ厳しいと有名で。
鍵を持ってない住人以外が入れるなんて事は
滅多に無いハズなんだけど……
「んー?
『鍵忘れました!』って言ったら、警備の人通してくれたよ?
もしかしたら私と音遠を見間違えたのかもね!
同じ制服だし、髪の長さも体のスタイルもよく似てるし」
「そう……なんだ……」
ニッコリと悪びれもなく答える澪に、私は何も反論出来なかった。
……信じたいけど、信じるのが怖い。
本当に……私の“お見舞い”が目的で来てくれたの?
――自分の性格が歪んでるってコトは、
自分が一番分かってる。
わざわざ家まで来てくれた友達。
本当なら、喜ぶべきコトなのに。
「ね、音遠。上がっていいかなっ?」
「あっ、ゴメンね!どうぞ!」
おじゃまします、と笑顔で家に入ってくる澪を見ながら……
……私は、醜い自分と葛藤していた。
――それから澪は、私が休んでた3日の間に配られたプリントや、
来月にある学校祭の説明なんかをしてくれた。