私の兄は、アイドルです。
「澪の名前なんて……
呼ばないで……
楽しそうに……
……話さないで……っ」
押さえ込めなかった衝動は、一気に爆発して。
声が震える。
涙が零れる。
狂ってしまった自分の感情は……
もう、自分でも止められない。
嗚咽混じりに叫ぶ私。
「……一体どうしたお前、まだ熱あんのか?
……ってか何で泣いてんだ?」
そんな私に降り注いだ
お兄ちゃんの声。
ギュッと抱きついた私の背中をポンポンと優しく撫でながら、
少し困惑気味な声色で話し掛けてきた。
鼓膜を刺激するようにして耳元に響く、
低くて甘い
『お兄ちゃん』の声。
優しい、手のひら。
昔大好きだった、
優しい優しい
『お兄ちゃん』の手のひら。
ふんわりと頬に当たるのは、柔らか猫っ毛。
少しくすぐったい、
『お兄ちゃん』の髪の毛……
――『兄妹』。
突然その二文字が急に頭に浮かび、私はハッと我に返った。
「……っ、ごめ…なさっ、何でもない…………!!」
何してんだろ、私……!
やってるコトがバカすぎる……幼すぎる……!