私の兄は、アイドルです。
 



バッと抱きついてた体を離し、すぐさまお兄ちゃんから離れた私。



今自分が犯した失態に、
心臓が痛いくらいにドキドキと騒ぐ。



この心音、お兄ちゃんに聞こえてたらどうしよう……




そんな狼狽える私に反して、

目の前のお兄ちゃんは
私に向かってやけに冷静な声で話し掛けてきた。





「……何でもないワケねぇだろ。


――……なぁ。音遠?
お前さ、俺のコト“大嫌い”だよな?」




「え?どうして……?」




首を傾げる私。



だって、その質問の意図も意味も……

さっぱり分からない。




まだ涙で潤む瞳。

その瞳をお兄ちゃんに向ける。





……視線が、ぶつかる。




今、私の目の前には……


超大人気のアイドル『ナオト』でもある、
お兄ちゃんがいる。




――吸い込まれそうなくらいに綺麗な、瞳。

スッと高い鼻。

形の良い唇。

完璧すぎる容姿。




そして何故か

真剣で熱くて妖艶な、
お兄ちゃんの表情。



その綺麗すぎる表情に……


……また、狂ってしまいそうになる。




から、私はまた目線を落としたんだけど……




 
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