私の兄は、アイドルです。
「“大嫌い”だよな?
いつも言ってんだろ?」
何だか真剣なお兄ちゃんに両肩を掴まれ、
また視線を合わされる。
お兄ちゃんの真剣な瞳は……
……私の心を更に掴んで離さない。
「それは……っ」
『お兄ちゃんのコトなんて、大っ嫌い!』
毎日毎日、当たり前のように言ってた言葉。
別に、罪悪感とか何もなかった。
だって、その時は本当にウザかったから。
本当に嫌いだったから。
なのに……
『今』の私は、
冗談でも『大嫌い』だなんて言える程の余裕なんて
これっぽっちも無かったんだ。
「……なぁ、言えよ。
“大嫌い”って。」
「……どうして……?」
何故か段々と焦っていくお兄ちゃんの声色に、
少し戸惑う。
どうしたの?お兄ちゃん……
合わさる瞳で、ジッと見つめると……
「……頼むからっ……言ってくれよ!
いつもみたいに『大嫌い』って……!」
そう叫ぶように言ったお兄ちゃんは――
――何故だろう、
泣くのを我慢してるように見えた。