私の兄は、アイドルです。
───
もし
お兄ちゃんが『アイドル』じゃなかったら、
こんなにも私が狂ってしまう事は無かったのかな?
もし
お兄ちゃんが『アイドル』じゃなかったら、
澪がお兄ちゃんの事を好きになることは無かったのかな?
私の想いも……
一生隠し通せたのかな?
───
「「……………」」
長い長い、沈黙。
痛いくらいに辛い沈黙。
唇は離れても……
きつく掴まれてるお兄ちゃんの腕は、一向に離れない。
一体何分くらいこうしてただろうか。
「……腕、痛い……」
この長い沈黙を破ったのは、他でもなく自分だった。
「あっ、悪ィ……」
私の言葉を聞いた瞬間に、パッと手を離したお兄ちゃんは。
「音遠……悪かった。
さっきの、忘れろ……」
ベッドからスッと立ち上がり、私に背を向けた。
忘れろ……?
いや、無理だよ。
普通に無理。
絶対無理だ……
まだ暖かい感触が残る唇。
……キスの感触を思い出すたび、背筋がゾクゾクする。