私の兄は、アイドルです。
 



鏡の前で、2人並んでお化粧チェック。


って言っても……

ほとんど化粧なんてしない私は、リップを塗って髪の毛を正すフリをするだけ。



マスカラやファンデを塗る澪を横目で見つめながら……



……このなんとも言えない微妙な空気をどうにかしようと




「れ、澪って……
昨日学校休んでたんだね……?」



勇気を出して、澪に話し掛けた。




なのに




「え?うん」



びっくりするくらいに素っ気なく答えた澪は、

私の方を見ることもせずにマスカラを塗り続ける。




……めげない私は、再度話し掛ける。




「……私んちに来た時さ、
……澪は制服着てたよね?」


「あぁ、そうだね」




――あまりにも適当な相槌。





私は……


澪の意図が
澪の気持ちが

完全に分かってしまった。




……やっぱり、

人なんて

そう簡単に



信じるモンじゃない。





「…………どうして?」




答えなんて、分かってる。

痛いくらいに、分かってる。



けれど一応尋ねると……




 
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