私の兄は、アイドルです。
 




「はぁ?どうして?
ねぇ音遠、それくらい分かんないかなぁ?

そんなの……ナオトに会うために決まってるじゃん」




塗り終わったマスカラのチェックをしながら、

少しダルそうに言い捨てた。




「…………」



目の前にいる澪が、まるでいつもと別人に見えて……

私は何も言えない。




「風邪引いたなんて嘘。

ナオトのスケジュール、ちょっと調べてもらってさ?
夕方に仕事終わるみたいだったから。

だからついでに音遠の家も調べてお見舞いに行ったの」



「…………調べてもらって…?」





――そうだ。


確か澪は……
イィとこのお嬢様だったんだ。


だから……

お兄ちゃんに会いたいタメに……
住所やスケジュールを、
わざわざ調べたの……?




話を聞きながら、軽く震えが止まらない。


その震えを止めるために……

……ギュッと、拳を握り締めた。





「何、そんな泣きそうなマヌケな顔しちゃってさ?
音遠らしくないよっ?

……ほら、いつもみたいに笑ったら?

今まで私達みんなを騙し続けてたみたいに、ヘラヘラ笑ったら?」




 
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