私の兄は、アイドルです。
「本当に、ヤバいくらいシスコンだよね?
でもま、そのお陰でナオトと仲良くなれたんだけど」
「…………」
「音遠、ありがとね。
音遠がいなかったら……
私、消極的な自分のままだった」
「…………」
目の前にいるのは、
もう私の知ってる澪じゃない。
私の知ってる澪は、
もっと純粋だった。
「明日の放課後、音遠んち行くから。
気遣って、ナオトと2人きりにさせてね?
だって私達……
……“友達”だもんね?
もちろん、応援してくれるよね?」
――私の目の前にいるのは……
もう、“友達”じゃない。
私の事を利用するだけの、
“元友達”だ。
けど
私は
「……う…ん……」
――嫌だ、なんて言えるワケなかった。
だって……
万が一にでも
私の気持ちが
バレるワケにはいかないから。
私がお兄ちゃんのコト
“好き”だって、
絶対にバレるワケにはいかないから。
――心を支配する嫉妬、
このドロドロした
醜い感情は。
全部全部、
お兄ちゃんのせいだ。
―――――