私の兄は、アイドルです。
★stage.13
──その日1日私は、
授業をサボり放課後までずっと保健室にいた。
こうして丸一日サボるだなんて……初めてかも。
澪の顔を見るのが怖くて、
もし見たら、
ドロドロした感情が溢れ出して
止まらなくなりそうだから……
……私は、こうして逃げたんだ。
『下校時刻になりました……』
放課後のアナウンスが保健室に流れ、
仕方なく私は重い足取りで教室に戻る。
夕方の廊下はもう人もまばらで。
「はぁ……」
なんだか……
ストレスで、円形脱毛症にでもなりそうだよ……
軽く溜め息を吐きながら
教室に入ると……
ガラッ
「あっ、音遠大丈夫~?」
「待ってたんだよ!
駅まで一緒に帰ろ~!」
……やっぱり、
いつも通りの優しい笑顔で迎えてくれた美夜と沙那がいた。
「美夜……沙那……!」
「「何よ音遠、そんなに満面の笑みで」」
私の声に、2人は声を揃えて不思議がるけど……
……ありがとう。
2人とも。
こんな優しい友達がいて。
少し、救われた気がした。
「……れ、澪は……?」
そして……澪がいなかった。