私の兄は、アイドルです。
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ずっと
忘れていたの。
どうして忘れちゃってたんだろう。
あんな暖かくて、
あんな可愛い
2人の願い事。
小さい頃に、
2人で願った願い事。
いっせーのーでで
言い合った、
2人おんなじ願い事。
だけどね?
それは同時に、
『約束』でもあったの。
ねぇ、お兄ちゃん。
アナタはあんなちっぽけな約束のために
ずっと
縛り付けられてたままなの?
昨日交わされたキス。
あのキスをした
お兄ちゃんは
私と、
同じ気持ち
だったんですか……?
─────
──夜、12時過ぎ。
玄関のガチャンという音と共に
「ただいま―」
帰ってきたお兄ちゃんの声が響いた。
……だけど私は、
いつもみたいにお兄ちゃんの夕飯の用意もすることなく……
……ずっと、ベッドにうずくまっていた。
顔を見てしまったら……
……きっと絶対、取り返しがつかなくなる。
そんな私の想いとは裏腹に……
コンコン
「……音遠、入るぞ……?」
お兄ちゃんが、私の部屋にやってきた。