私の兄は、アイドルです。
「…………」
どうして、帰ってきて早々に私の部屋になんか……
スタスタとベッドの側まで歩いてきたお兄ちゃんは、
まるで昨日のキスが本当に無かったかのように。
……普段通りに接してくる。
「体の具合、どうだ?
今日は一日中保健室でいたらしいじゃん」
「なん……で、知ってるの……?」
ベッドに軽く腰掛け、
何だか優しく私に問い掛けてきた
お兄ちゃんだけど……
……どうしてソレ、知ってるの……?
誰から聞いたの?
……まさか…………
「あ?あぁ、
昨日来た澪、だっけか。
あの子が今日メールで教えてくれてさ。
お前の事、すげー心配してたぞ?」
――頭を、軽く殴られた気がした。
……それくらい、ショックだった。
やっぱり、澪の言ってた事は……
……本当だったんだ。
じんわりと、涙が溢れ出しそうになる。
声が……微かに震える。
だけど私は、尋ねた。
「ど、して……
澪のアドレス、知ってるの……?」
完全に、声は震えて目も泳いで。
そのくらい、焦ってたと思うんだ。