私の兄は、アイドルです。
――兄妹で好きあうっていうのは、
それ相応の覚悟と犠牲が必要だ。
その事が痛いくらいに
分かったのは、
いつだったかな……
―――――
――――
翌日の朝、
私とお兄ちゃんが顔を合わす事はなかった。
仕事が忙しいのか……
お兄ちゃんは、カナリの早朝に家を出たみたいだった。
──昨日のあのキスの後。
「もう遅いし……早く寝ろよ」
私を気遣ってくれたお兄ちゃんは、
それだけ言うと
額にキスして部屋から出て行った。
そして1人残された私は……
ドキンドキンと、
体全体が心臓みたいにウルサくて。
幸せと後ろめたさが
喜びと後悔が
そんな色んな感情が、
心の中で大葛藤してた。
嬉しいけど、
それ以上に……
……困惑してたんだ。
──そして翌日の放課後。
教室で帰る支度をしてる前に、機嫌よく現れたのは……
「ねぇ、音遠?一緒に帰ろ?」
「……澪…っ」
にっこりと、怖いくらいの笑顔で微笑んだ澪だった。
……完全に……忘れてた。
そういえば……
澪、今日ウチに来るんだった……