私の兄は、アイドルです。
お兄ちゃんが小学生の頃、かぁ……
その時の私は、
まだ1人じゃ何も出来ない子供だったけど。
……今思えば、
あの時が一番お兄ちゃんと一緒にいたのかもしれないね、なんて。
ふと……
考えたりしたんだ。
まぁ、
写真あげるくらいなら……
「別にいいけど……」
そう言った私の声に、
「マジでっ!やったー!」
本当に嬉しそうに
澪が言うから。
……素直に……
“羨ましい”、
ただそう思った。
私は……
……ここまで無邪気に、
笑えないから。
私の気持ちは、
私とお兄ちゃん以外に、
決して知られてはいけないの。
何とも言えない虚脱感が心を覆うけど、
それは自分が選んだ事だから仕方ない。
──そして、時間が少し経ち。
「ただいまー……」
玄関の方から、
お兄ちゃんの声が聞こえてきた。
とその瞬間
「あっ、帰ってきたっ!おかえりなさいっ!」
ビックリするくらいに
キャラが変わった澪は、
笑顔でニコニコ微笑みながらお兄ちゃんを迎えた。