私の兄は、アイドルです。
いつも通りの
リビングまでの道のりを
スタスタと歩いてきたお兄ちゃんは、
私の部屋から勢い良く飛び出してきた澪を見て
少し驚いたようだった。
ってそりゃ驚くよね……
「……え、澪じゃん。
今日も来てたんだ?」
「はいっ!だって私と音遠は親友ですからっ!」
……どの口が、そんな嘘を吐くんだよ。
誰と誰が、親友だっていうの?
お兄ちゃんに軽く微笑み掛けられて
真っ赤になりながら答える澪を見て、
少しずつ……イライラが大きくなっていく。
だけど。
そのイライラは、
お兄ちゃんによって
見事に倍増される。
「ふーん?あ、音遠」
「……何」
何……?
いきなり笑顔で話し掛けてきて……
「冷蔵庫の中のプリン、食っていいか?」
……………はぁ!?
「……はぁ……?
……どうぞご自由に?」
私が返事する時には、
お兄ちゃんの手のひらには既にプリンが乗ってて。
はぁ……
見てよあの嬉しそうな顔。
そのプリンを見つめ、
ワクワクした表情でスプーンを探していた。