私の兄は、アイドルです。
 



良かった……

バレなくて。





――私のメール相手は、

まぁもちろん春サンなんだけど。




【俺が音遠とメールしてること、直人には内緒な?】



って、
アドレス交換した日に
春サンが言ったから。


……なんでかは分かんないけどさっ。



だから、メールを始めた一週間前から
この事をお兄ちゃんには内緒にしてるんだ。






寝ぼけ眼(まなこ)で
ピッとリモコンでTVの電源を点けたお兄ちゃんは、
途端にいつものお兄ちゃんに戻った。




「あ、なぁ。
今日は帰り10時頃になるからさ、夕飯はハンバーグがいいな」



「へ?うん、分かった。
作って待っとくね」



「おう」





――ハンバーグは、お兄ちゃんの大好きなメニューで。


私は、密かに
『頑張らなきゃ』
って気合いを入れたんだ。






──その時のお兄ちゃんの態度は、

至って普通だったの。



いつもと変わらない朝。


いつもと変わらない
穏やかな時間。




だけど……



……次にお兄ちゃんに会った時には、



もう

いつものお兄ちゃんじゃ……





……なくなっていた。





―――――

 
< 223 / 297 >

この作品をシェア

pagetop