私の兄は、アイドルです。
良かった……
バレなくて。
――私のメール相手は、
まぁもちろん春サンなんだけど。
【俺が音遠とメールしてること、直人には内緒な?】
って、
アドレス交換した日に
春サンが言ったから。
……なんでかは分かんないけどさっ。
だから、メールを始めた一週間前から
この事をお兄ちゃんには内緒にしてるんだ。
寝ぼけ眼(まなこ)で
ピッとリモコンでTVの電源を点けたお兄ちゃんは、
途端にいつものお兄ちゃんに戻った。
「あ、なぁ。
今日は帰り10時頃になるからさ、夕飯はハンバーグがいいな」
「へ?うん、分かった。
作って待っとくね」
「おう」
――ハンバーグは、お兄ちゃんの大好きなメニューで。
私は、密かに
『頑張らなきゃ』
って気合いを入れたんだ。
──その時のお兄ちゃんの態度は、
至って普通だったの。
いつもと変わらない朝。
いつもと変わらない
穏やかな時間。
だけど……
……次にお兄ちゃんに会った時には、
もう
いつものお兄ちゃんじゃ……
……なくなっていた。
―――――