私の兄は、アイドルです。
もうとっくに夕方も過ぎ、
辺りは段々と暗くなってきていて。
道路を行き交う車は、
仕事帰りの人も多いのか軽く渋滞になっていた。
そんな時。
「なぁ、腹減らね?
どっかで飯食う?」
春サンが、話し掛けてきた。
……本当に良い人だなぁ……
私に気を遣ってくれて!
でも……ご飯は……
「あっ、ごめんね?
私帰ってお兄ちゃんの夕飯作らなきゃ!」
――今日のメニューはハンバーグ。
お兄ちゃんのリクエストだもんね?
そう思いながらも答えると。
何故か、春サンが顔をしかめた。
「え?でも直人……
今日誰かと夕飯食べに行くって言ってたぞ?」
……は?
お兄ちゃんが?
「え……ホントに?いつ?」
慌てて尋ねる。
「俺が上がる少し前かなぁ?
直人に誰かから電話掛かってきてさ。
急いで出てったけど」
「そうなんだ……」
お兄ちゃんの方から……
ハンバーグってリクエストしてきたくせに……
夕飯いらないんなら、
連絡くらいしろっつーの!
軽くイラつく。
でもそっか……
夕飯作らなくていいんだ……