私の兄は、アイドルです。
 



──そして私はトイレに向かい。


すぐに、後悔した。





「おはよ」



「あ……澪、おはよ……」




トイレに行くなり、
澪と出くわしてしまったんだ。



澪……

また鏡の前で化粧直ししてるや……

……まだ朝なのに。


澪って……こんなに頻繁に化粧直しするような子だったっけ……?


っていうか、気まずい……



微妙な空気が辛いから、
とっさにトイレに入ろうとしたんだけど……


澪に声を掛けられ、


しかもその内容に……


……足が、止まってしまった。





「あ、ねぇ音遠。
ナオト、やっぱりソロデビューする事にしたんだ?」




──は?



澪……



「やっぱり……って……?」



話の繋がりが、全然分かんない。


やっぱり、って……何?



訳が分からない私は、
かなりアホ面してたみたいで。


澪が、なんだか勝ち誇ったような笑顔で見下してきたんだ。





「え?ヤダ、そのマヌケな顔……
もしかしてソロデビューの事、何も知らなかったの?兄妹なのに」



「え……?」




マヌケ顔……は置いといて!

知らなかったって、何が?



 
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