私の兄は、アイドルです。
 



首を傾げる私に、
澪は続けた。




「私ねぇ、少し前からナオトに相談されてたんだ。
ソロデビューするかどうかって事」



「…………」




そう……なんだ……?


お兄ちゃん……

私には何も相談なんてしてくれなかったのに……



澪の言葉に、何も発せれない。




「昨日事務所の社長さんと夕飯一緒に食べに行ったらしくてね?
その時決めたらしいよ」



「…………へぇ…」




……昨日……

……へぇ、そうなんだ……


社長さんとご飯食べに行ったんだから……

そりゃ私の作ったハンバーグなんていらないよね……



頭の隅では、
そう冷静に考えられる自分がいるのに。


考えに、行動と表情がついていかなくて。




「何、そのマヌケ面。
あはっ、本気で何も知らされてなかったのね!

他人の私の方が、こんなにも知ってるなんてさ!」




──そう、声を出して笑われた。



……チクンと、胸が痛む。



悔しいし

腹が立つし。




「それは……っ」



何かしら言い返そうとするんだけど……




 
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