私の兄は、アイドルです。
 




「あははっ、音遠ってば……
ナオトに大事にされてると思ってたけど……

……案外、信頼されてないんだね?」





──嘲笑うかのような、
この言葉に。




私は──





──この場で、泣いてしまいそうだった。



けど、

泣いちゃ、ダメ。


普通の『妹』は、

こんな事言われたくらいで泣かないもん。



泣いちゃダメだよ、私。



私の気持ち……


絶対に澪に気付かれちゃ
ダメだから……





「はーっ、でも嬉しいなっ!
私、妹である音遠よりも信頼されてるのね!」



「…………」




「なんだか私、ナオトの『特別』って感じじゃない?それじゃぁね~」




上機嫌で去っていく澪の後ろ姿を見てると。


段々と瞳が霞んで、

ちゃんと見れなくなった。





──信じられなく、
なりそうなんだ。



お兄ちゃんの心が。

お兄ちゃんの気持ちが。




2人で願った願い事。


そんなの、絶対に叶いっこないけど。



私は、あの両想いになった日から今日まで
ずっと幸せだったんだ。



 
< 236 / 297 >

この作品をシェア

pagetop