私の兄は、アイドルです。
「あははっ、音遠ってば……
ナオトに大事にされてると思ってたけど……
……案外、信頼されてないんだね?」
──嘲笑うかのような、
この言葉に。
私は──
──この場で、泣いてしまいそうだった。
けど、
泣いちゃ、ダメ。
普通の『妹』は、
こんな事言われたくらいで泣かないもん。
泣いちゃダメだよ、私。
私の気持ち……
絶対に澪に気付かれちゃ
ダメだから……
「はーっ、でも嬉しいなっ!
私、妹である音遠よりも信頼されてるのね!」
「…………」
「なんだか私、ナオトの『特別』って感じじゃない?それじゃぁね~」
上機嫌で去っていく澪の後ろ姿を見てると。
段々と瞳が霞んで、
ちゃんと見れなくなった。
──信じられなく、
なりそうなんだ。
お兄ちゃんの心が。
お兄ちゃんの気持ちが。
2人で願った願い事。
そんなの、絶対に叶いっこないけど。
私は、あの両想いになった日から今日まで
ずっと幸せだったんだ。