私の兄は、アイドルです。
「……指、挿れるぞ」
冷たくそう言って、
本当に指を挿れてこようとしたから。
「……っ、やぁ……!」
必死でお兄ちゃんに抵抗した私の涙腺は、
まるで栓の壊れた蛇口みたいに崩壊した。
怖い
怖いよ
こんなの……
……いつものお兄ちゃんじゃない…………
ポロポロポロポロ溢れる涙は、
止まることを知らない。
怖い
怖いよ……
微かに震える体。
震える……私の心。
そんな私を見つめていたお兄ちゃんは……
「……ほらな、やっぱ泣いてる……」
「……っ……!」
そう言って指を止め、
何故か優しく──
──抱き締めた。
分からないよ。
お兄ちゃんが、
お兄ちゃんの気持ちが……
全然分からない。
「怖かったろ、ごめんな?
……でもこれで分かっただろ……?」
「……なに……が…?」
突然
さっきとは打って変わって、
何だか酷く泣きそうな声色で。
お兄ちゃんが、
痛いくらいに抱き締めてくる。
ねぇ……
お兄ちゃんも、
震えてるの……?