私の兄は、アイドルです。
俺も……
ああやって音遠と手を繋いで街を歩きたいな……
そんな事を考える俺って、結構重症?
……幸せ、だからかな。
自嘲気味に、少し笑う。
っていうかあの子の後ろ姿……
なんだか音遠に似てるなぁ……
そう思った瞬間、
手を繋いでる女の子がくるりと向きを変え、
その真っ赤になった笑顔が見えたんだ。
真っ赤になった……
…………音遠が。
そして……
隣にいる男の顔を見た瞬間に……
「はっ……んだよ、そういう事かよ……」
……笑うしか、なかったんだ。
─────
「まさかさぁ、そんな絶妙なタイミングで発見するか?普通。
春と音遠ちゃんのデート。
しかも手なんか繋いじゃってるしさ」
そう言いながら
既に空になった缶ビールを机に置いた豊は。
手早くもう一本のビールの蓋を開けた。
「本当に。
……俺がソロ活動を断ろうとしてた日だろ?
タイミング悪過ぎなのも程があるよ」
まだ一口しか飲んでないビールを見つめながら、
俺はこう言った。
本当に……
タイミング悪過ぎだ、俺。