私の兄は、アイドルです。
あの日あの時あの2人を見なければ……
……きっと俺は、ソロ活動なんてしてないだろう。
「春の奴……
音遠ちゃんの事かなり本気みたいだしな……」
豊がそう言った。
春が本気、か……
──実は、さ?
大分前から、
春が音遠の事を好きなのは知ってたんだ。
なんかさ……
……俺、分かっちゃうんだよな。
昔から。
音遠に好意を持って寄り付く男を。
小さな頃からずっと
当たり前のように守ってきたからかな?
物心ついた頃には
音遠を好きな奴らと、
コッソリ喧嘩してた。
本人は自覚してねぇみたいだけど
音遠はかなりモテたから……
数え切れないくらい、
喧嘩した。
……ま、モチロン全部勝ってたけどさ。
──けど、まさかだよ。
まさか春が……
……音遠を好きになるなんて。
本気で音遠の事好きになるなんて。
「……分かってるよ。
だから……
……だから、身を引いたんだよ……」
「……直人……」