私の兄は、アイドルです。
 



あの日あの時あの2人を見なければ……


……きっと俺は、ソロ活動なんてしてないだろう。




「春の奴……
音遠ちゃんの事かなり本気みたいだしな……」



豊がそう言った。



春が本気、か……





──実は、さ?


大分前から、


春が音遠の事を好きなのは知ってたんだ。




なんかさ……


……俺、分かっちゃうんだよな。

昔から。


音遠に好意を持って寄り付く男を。



小さな頃からずっと
当たり前のように守ってきたからかな?



物心ついた頃には

音遠を好きな奴らと、
コッソリ喧嘩してた。



本人は自覚してねぇみたいだけど

音遠はかなりモテたから……



数え切れないくらい、
喧嘩した。


……ま、モチロン全部勝ってたけどさ。





──けど、まさかだよ。



まさか春が……



……音遠を好きになるなんて。




本気で音遠の事好きになるなんて。





「……分かってるよ。
だから……

……だから、身を引いたんだよ……」




「……直人……」





 
< 253 / 297 >

この作品をシェア

pagetop