私の兄は、アイドルです。
 



……春が本気で音遠の事を好きになるなんて、

めちゃくちゃ予想外だったけど。




俺から見た春は


凄い良い奴だし

仕事にも精一杯全力で力注いでるし

家族や仲間の絆を大切にする熱い奴だから……



……だから、春なら安心かなって思ったんだ。



春になら、安心して音遠を任せられるかな、って。




俺といたって……


……音遠が、不幸にしかならないのなら。



春と仲良くなって、

幸せになったらいい。





「春の方が、俺なんかよりも音遠を幸せにできるから。

だから、身を引いたんだよ……」




豊にそう言いながら、

無意識に拳を握る。




心の奥底では


嫌で嫌でたまらないと

誰かが大声で叫んでる
けど



俺が音遠を
幸せに出来る

良い方法は


他に見つからない





「……そっか。
お前が決めたんだし、俺は何も言えねぇよ……

……ま、近親相姦なんて……
あの妹ちゃんが精神的に耐えれるかも微妙だったけどな……」




「……だな……」





──豊の言葉が、重く重くのしかかる。




音遠は……


アイツは、脆い奴だから。




 
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