私の兄は、アイドルです。
 




「いいんだ、もう。
俺……いっぱい泣かせちまったからさ?」




──だって、


たくさんたくさん
泣かせてしまったから。




「直人……
…………お前ってさ、
昔からホントに……
本気でバカ兄貴だよな……」




心底哀れんだような瞳で、豊が俺を見たから。




「うっせーな!
……んな事、自分が一番身に染みて分かってるよ……!」



そう言って、豊に吐き捨てるように怒鳴るけど。



そんな事をしたって、


俺の心から
音遠への想いが消えることはない。





──ただ、嫌だったんだ。



想像したら、
耐えれる自信が無かったんだ。



楽しそうな春と音遠を
交互に見る事が。



そんなの、辛すぎる。



辛すぎるから、

BIG4を辞めてソロ活動する事を決意した……


……だなんて、
なんつーバカみたいな理由だよ……俺。



どうしようもない

ガキみてぇだ。






──そんな時。




「……あ、メールだ」



机の上に適当に置いていた携帯が、光ってる。



多分あの子からだろう。

めんどくさいな……



そう思いつつ手にとり、
メール画面を開くと……



やっぱり澪からだった。



 
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