私の兄は、アイドルです。
……俺は、分かってたんだ。
きっと澪も……
……音遠を利用してるっていう事を。
たまにさ?
ボロが出るんだ、澪は。
さっきのメール文もそうだ……
音遠は、絶対に俺の事でキャーキャーなんて言わないから。
しかも、学校でなら……
……尚更だ。
──初めはさ?
ただ、音遠の友達だから。
大切な音遠の、大切な友達だから。
そんな友達の前で、
少しでも
“良いお兄ちゃん”に
なりたかったから。
音遠が自慢出来るような“兄”に、
なりたかったから。
だから、優しく接してたんだ。
別に、澪に特別興味も無かった。
……強いて言うなら、
姿形や背格好、髪型までもが……
何となくだけど
音遠に似ていた事に、
少し驚いた。
……ま、顔は全然似てねぇけどな。
「呼ぶのか?その子。
16日。」
「あ?」
いきなりの豊の問いに、
考え事をしていた俺は
不意をつかれた。
……呼ぶ?
16日?
澪を?
「あ?ってバカみたいな顔して……
お前のソロコンサートの日だよ。
遂にボケたか?」