私の兄は、アイドルです。
寝ぼけたように返事した俺を
気の毒そうに見た豊は
そう言いながらも酒を飲む。
けど
「悪ィ……疲れてんのかも……
そっか……
10月16日、か……」
……自分のコンサートの日を瞬時に思い出せないなんて、
相当疲れてるんだろうか。
それか……
……相当、参っているのだろうか。
16日……
その日は……
……音遠の誕生日の、
前日なんだ。
「つかさ、直人。
そんな事どーでもいいんだけどさ。
俺今日ココまで車で来たんだよね~。
このままだと飲酒運転になるから、ココで寝るわ」
突然そう言うと
ソファにゴロンと横になった酔っ払いの豊。
「ちょ、今日もかよ!?」
豊お前……
昨日も一昨日もその前の日も、
毎日のように俺のホテルまでやってきては
酔いつぶれて寝てるじゃねぇかっ!
お前も“トップアイドル”なんだから……
疲れ取るために、
ちゃんと自分の布団で眠れよ……
「おやすみ~」
そう言って、1分も経たない内に寝息を立て始めた豊。
早……
やっぱり疲れてたんだな、豊。