私の兄は、アイドルです。
「え?お兄ちゃん?
じゃあ……キミが音遠ちゃん?」
「はい……どいてくれます……?」
少し驚いた様に言ったユタカさん。
なんで私の事知ってるんだろ?
ってそんなコトより
早くどいて?
そんな空気を読んだのか、ユタカさんは私の上から素早くどいた。
「直人悪ぃな、この子が音遠ちゃんだって知らなくて」
「豊……
コイツに迫るなんて、
お前目腐ってたんだな……」
少し離れた所にある椅子に腰掛けたお兄ちゃんは、
机に肘を突きながらそう言った。
「なっ!
ちょっとお兄ちゃん!?そんな言い方って酷くない!?」
目腐るとか!
私の顔は生ゴミですか!?
「は?何お前。
豊に迫られて本気でドキドキした系?」
怒る私に、しれっとそう問い掛けてきたお兄ちゃん。
ユタカさんに迫られて?
「そっ、そりゃあ少しは…」
だって……
初めてだったんだもん
男の人に押し倒されたの……
ちょっと熱くなった頬を両手で触ると
「はっ。バッッッカじゃねーの?
身の程を知れよ」
本気で心底バカにしたようにお兄ちゃんが鼻で笑った。