私の兄は、アイドルです。

　




「えっ！？何急に！
べ、別にいないけど……！？」




──突然の予想外の問い掛けに、

ヒドく焦る。



春さん、急にどうしたんだろう……





“好きな人”



その言葉に、心臓がウルサくざわつくけど。





春さんには──




──バレちゃ、いけないから。



私は、嘘を吐いたんだ。




どうかお願い。



この罪深い嘘に、

騙されて？






そんな私の嘘に
まんまと騙された春さんは。




「そっか……良かった……」



「……春さん？」




とてもとても嬉しそうな顔で、

そう言ったんだ。




──その瞬間。



私は、分かっちゃった。


さすがに鈍い私でも、

気付いちゃったんだ。




私は

春さんと合っていた視線をわざとズラし……


……ジッと、意味もなく地面を見つめた。





「音遠、さ……
俺の事……どう思う？」



「春さんの事？

……優しくて面白くって……

……良い人だよね？」




春さんの質問。



意図も意味も、分かってる。




けど……



はぐらかす。