私の兄は、アイドルです。
 



そんな私に、

春さんは核心を突いてくる。





「……俺の事……
……異性として、どう思う……?

俺……さ。

音遠の事、好きなんだけど」




今まで見た中でも一番真剣な表情で、

ハッキリとそう言ったんだ。





──突然の春さんからの告白。



こんなにカッコ良くて
素敵な人からの告白なんて……


普通なら絶対にドキドキするはずなのに。



ドキドキして、
舞い上がるハズなのに……





「……ごめ、なさ…………」




何故だろう


私の両目からは……


……涙が、ポロポロと溢れた。





春さんは、優しい。


優しくてカッコ良くて

歌も上手くって

人気もあって

家族想いで……



こんな良い人に好いてもらえるなんて、

幸せな事は無いのに。



私みたいなミジンコが
こんな良い人を振るなんて、

有り得ないくらいなのに。





私の固い心は……動かない。





「……そっか、なんか俺のがごめんな?」




どうして春さんが謝るの?



そう言いながらも
優しく頭を撫でてくれるから。


その優しさに、ついつい甘えてしまいそうになるけど。




 
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