私の兄は、アイドルです。
 




けど、ダメ。




甘えて、

お兄ちゃんの事を忘れて
春さんを利用する……



……なんて悪女みたいな事、

私には絶対に出来ないから。




私の気持ちは……


決して春さんには揺るがない。






「……っ、なんで春さんが謝るの……?」




頭を撫でてくれる手のひらが、
なんだか凄くくすぐったくて。


涙を拭いながらも
ニコリと微笑むと。




「えっ?あっ、いや、さぁ……」



何故かしどろもどろな春さん。




「?」



急にどうしたの?


首を傾げながら問い掛けると……




クルリと体の向きを変え、
春さんは私に背を向けた。




「……好きな子が泣いてんの、見てらんねぇからさ……

だから早く、泣き止んでよ……」




そう、言ったんだ。



その声色が、
あまりにも切なそうだったから。



私の心臓は
ズキンと傷むけど……





「恋人はダメでも、さ?友達だったら……
ずっと仲良くしてくれるか?」



「春さん……」




「ははっ、っつーか振られたくせにさ?
なんか俺って女々しいよな?」




そう言いながら帽子を取って、

金髪の髪の毛をクシャッとかきあげた。




 
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