私の兄は、アイドルです。
 




「ははっ、マジだ!」




2人、笑い合いながら街中を走る。


いや、正確には……

追い掛けてくる春さんファン達から
逃げてたんだけど。




「あっ、明日のコンサート迎えに行くからな!」



「えっ、わざわざ!?」




2人、走りながら話す。

……なんか楽しいな。
こーゆうの。


明日……わざわざ迎えにきてくれるんだ?




「当たり前じゃん?
“友達”だしな?」




“友達”


そう言いながら、
春さんはにっこりと笑ったけど。



その笑顔が、いつもと違うって分かったんだ。



無理して、笑ってくれてる。



私……


……春さんを、傷付けちゃったかな……





その時一瞬、頭をよぎった。





──もし私が春さんと付き合ったら


お兄ちゃんは、どうするかな……──





お兄ちゃん?



もし今私が


アナタを
好きだと言ったら




今のアナタは

私に微笑んでくれますか?




……アナタは今でも


私を想っていて
くれますか──?





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