私の兄は、アイドルです。
──2人ダッシュしながら走り、
表通りでタクシーを捕まえてマンションまで帰る。
「じゃあな、音遠。
……また明日」
「うんっ、春さん!
また明日ねっ!」
玄関近くでタクシーを降り、
そう元気に挨拶してヒラヒラと手を振ると。
にっこり笑った春さんを乗せて、
タクシーは街に消えていった。
……はぁ…………
春さん……
……ごめんね……
別れたと同時に込み上げてくる罪悪感と、
それと同じくらいに込み上げてくる焦燥感に淋しさ。
私、選択肢を間違えてるのかなぁ……?
バタンという音を響かせ、
マンションの部屋のドアを閉め。
夕飯のメニューどうしよう、
だなんて事を考えながら
リビングに入ると……
「……何、これ」
リビングの机の上に、
“ある物”が置いてあって。
その横に添えられたらメモを見て、
私の瞳からは涙が零れた。
「…………バカ過ぎるよ……
お兄ちゃん……」
いつの間に……
帰ってきたの?
私はギュッと、
“それ”を握り締めた。
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