私の兄は、アイドルです。
 


そして……


数時間のコンサートは無事終わり、

ラストのアンコールがやってきた。



春さん達BIG4のメンバーは、

ステージの横で3人肩を並べながらニコニコ笑ってお兄ちゃんを見守っていて。


お兄ちゃんは、
1人ステージのセンターに歩いていった。




楽しかったコンサートの終焉を嘆く声や、
ナオトへの声援、ラブコール等々が

会場をうるさいくらいに
包み込んでいたけど。




『この曲が、このコンサートの本当のラスト曲です。

明日発売の、俺の初シングル。

初めて……作詞とかしちゃいました。
ってめちゃくちゃ恥ずいんですけどね……

切なめなバラードだけど……
良かったら聞いて下さい』




静かに、そして何だか真剣に話したお兄ちゃんの言葉を聞いた途端……



ざわついていた会場は、

嘘みたいに
一気にシンと静まり返った。




お兄ちゃん……
CD、出すんだ……





――そして、穏やかに流れ出したメロディーは。


切なくて、でも優しくて。



どこか、私の心とシンクロする。





 
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