私の兄は、アイドルです。
 




……両想い、

になったハズだったのに。



『好きだ』って、

言ってくれたハズなのに。



幸せだった、

ハズなのに。




何かがこじれて、

こんがらがって。



グチャグチャになって、

どうしようもなくなって。




本当に……


私達の想いはこのまま
風化されちゃうんだろうか?





切なく優しいメロディーが会場を包み込み、

全員が目を瞑りながら
聞きほれていた。





――曲が、終わった。



静かに優しく、終わった。




静まり返った会場は、

途端にドッと爆発したようにザワツいて。




「ナオトっ!大好きーっ!」

「ずっとずっと大好きだよー!ナオトー!」

「こっち向いてーっ!」



感極まって、

お兄ちゃんに向かって愛の告白をする人が沢山いた。


中には、涙ぐんだりしてる人もいて。




私も……伝えたい。


……今の私の気持ち。




「おにい、ちゃん……」




何万というファンが叫んでる中で、

私1人が思い切り叫んだところで
きっとアナタには届かないけど。



だけど、言わせて?




「おにい……
………直人……っ!」




 
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