私の兄は、アイドルです。
 



「あー……、分かってるっつーの。
マジうっせーな、お前」



……カチン。


何だよその言い方は。

せっかく私が明日の事を心配してわざわざ言ってやったのにっ!


なんかお兄ちゃんってば、最近機嫌悪すぎじゃない!?




「あーそーですか!
それはそれは、大変失礼致しました!
じゃあオヤスミ!」



こんなヤツと話してたら、いつかストレスで胃に穴開いちゃうよ!



ウザ兄に向かってあっかんべーして、

自分の部屋に向かおうとくるりと体の向きを変えかけた



その時――




パシッ




「え……?」



力強く私の手首を掴んだのは……



……紛れもなく、お兄ちゃんの手のひらで。




「……なぁ、お前さ?

その……まさか春のコト、好き……なんか?」



「は?」



何、突然。
聞き間違い?



思わず自分の耳を疑うようなセリフと……



……目の前には……



……思わず目を背けたくなるような、真剣すぎるお兄ちゃんの眼差しがあったんだ……



……お兄ちゃんだって分かってても……

一瞬、ドキンと心臓が跳ねた。



 
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