私の兄は、アイドルです。
軽く話しながらマンションの正面玄関まで行くと……
既に、電話で呼んでいたタクシーが来ていた。
「乗るぞ」
そして、私達はホールに向かった。
「「…………」」
タクシーの中、無言。
気まずい。
普通に気まずすぎる。
兄妹でここまで気まずい空気を醸し出せるのも珍しいかも。
「……ねぇ、お兄ちゃん?」
軽く勇気を持って話し掛けたのに
「……今イメトレ中。
気ィ散るから話し掛けんなや」
「スミマセン……」
バッサリと、ぶった切られました。
まぁ、このバタバタした雰囲気のせいで昨日の事を再度悩まずに済んでるから……
……少し、良かったかも。
無言のままでタクシーは走り続け、
ホール前に着いた時……
……予想外の光景が。
「なに……コレ」
私の瞳の先には……
ビックリするくらいの人数の、人、人、人。
なんじゃコレは。
携帯で時間を確認すると、まだ10時30分くらいで。
コンサート開始が13時だから、まだ時間があるのに。
ザッと見る限り、もしかしたらホールに入りきらないんじゃないかってくらいの人数が並んでたんだ。