私の兄は、アイドルです。
コンサートって……普通こんなもんなの……?
私、1回も行った事無いから分かんないや……
タクシーが関係者専用の入り口の近くに停まった。
降りる準備をしてたら
「はぁっ……
音遠、万が一のタメに顔見られないようにフード被っとけ」
「へ?わっ!」
溜め息を吐きながら、お兄ちゃんが私のパーカーに付いてるフードを無理矢理被せてきた。
何よイキナリ!
訳が分からずにお兄ちゃんを見ると
「いいから被っとけ、バーカ」
そう言いながら帽子を深く深く被り、
私の頭をポンと叩いた。
「……?」
なんじゃ?
本当に訳が分からなくて首を傾げる。
「おら、行くぞ。
何があってもフードだけは被っとけ。
んで俺様の手離すな」
「あっ、うん」
そう言ってお兄ちゃんは、私の右手をグイッと引っ張り手を繋いだ。
ドキン……
って
いやいや!
何今の“ドキン”は!
ときめく要素ゼロじゃん!?
バカ兄なんだから!!
軽く頭を降って、自分の動機を否定する。
私達はタクシーを降りて、関係者専用入り口まで続く階段(距離にして30メートルくらい)を軽く小走りした。