私の兄は、アイドルです。
 



その頃の私は、

“お兄ちゃん=ヒーロー”で。



真っ直ぐにお兄ちゃんの言葉を信じて……


……お兄ちゃんの胸に、飛び降りた。




『ぅわっ……』



ふんわりとした柔らかな髪が、私の頬にあたる。


お兄ちゃんの腕の中。

一気に安堵感に包まれる。



そして……




『……よく頑張ったな、音遠。
ごめんな?怖い思いさせて。』



優しい優しいお兄ちゃんの声を聞いたら、

ものすごく安心したんだ……






―――





ピッ ピッ


微かに電子音が耳に入ってくる中




「おらぁっ、豊!
お前何ニヤニヤしながら音遠の寝顔見てんだよっ!離れろ!」


「うっせーな直人!
一応ココ病院だぞ?静かにしろよ」



うるさ……

何だか聞き覚えのある懐かしい声が……

……聞こえてきた。




「ん……」



ゴシゴシと目を擦りながら、重い瞼を開けると……




「っ音遠!?」


「……ん、おにー…ちゃん……?」


「音遠……!」




……?

……!!



一瞬固まってしまった。

だって……



今、お兄ちゃんに抱き締められてたから……。



 
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