私の兄は、アイドルです。
「へっ!?
ちょっ、お兄ちゃん!?
どしたのイキナリ!」
をいをいどうしたお兄様!
抱き締められる事にも驚きだけど……
締め付ける力、強すぎだからっ!
折れるからっ、負傷した肋骨が!
「……痛っ……、
お兄……ちゃん……っ」
あんまりにも強すぎる力のせいで、息絶え絶えになりながら。
私は、お兄ちゃんの胸の中でジタバタした。
すると
「っと、悪ィ」
お兄ちゃんは、抱き締める力を弱めた。
「…………」
って……
何のメロドラマだよこれ。
兄妹で抱き合うってどうよ?
ほらぁ、一応ココには
豊さんと豊さんパパと看護士さんもいるんだから、恥ずかしいから離して?
私が心の中で、切に願ってると。
「……良かった、音遠……」
──今度は、優しく。
まるで本当の恋人にするかのように、
優しく優しく抱き締めてきたんだ。
ふんわりと頬に当たる、
お兄ちゃんの柔らかな髪。
私とは違う
ふわふわの柔らか猫っ毛
ドキン
──また、心臓がざわついた。
煩い。煩いよ?
お願いだから静まって
この心音が
──お兄ちゃんに伝わる前に。