私の兄は、アイドルです。
 




「あの……お兄様……?」



たまらず私は声を出した。


静かに抱き合ったままなんて、無理。



普通じゃない。





心音が、ドキンドキンと体中に響く中……


……お兄ちゃんは、私から腕を放した。





「はぁーあっ、ったく、ホントに大変だったぜ。

お子様な妹が急にいなくなるもんだから、大人なお兄様は探し回ってくたびれたわ!
このボケ妹が!」



あれ。普通のバカ兄だ。


急に態度と声色を変えて
私からパッと離れたと思うったら、

意地悪い笑みでイキナリ指を差された。


っつか、
ボケっていうな!




「……だって」



急にいなくなった、
って言われても……

気失ってたんだから、仕方ないじゃん!




「だって?
こんなに迷惑掛けといて、言い訳すんの。
一回『反省』って文字を書いてみろ」



「なっ……!」



2日前の怒り、再び。


何も知らないクセに……
何も知らないクセにっっ!!



あまりの暴言を吐くバカ兄に、さすがに我慢の限界を超えた私。



だから……

だから、ついつい叫んでしまった。

本当のコトを。



 
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