私の兄は、アイドルです。
お兄ちゃんは
焦ってる私の顔すら見ず
そう言いながらガラリと病室のドアを開け、
静かに廊下を歩いていった。
こりぁマズい!
「雨……いや、雪が降る……!」
「何言ってんの、音遠ちゃん」
「豊さん!」
素直すぎるお兄ちゃんの行動に怯えまくってる私に、豊さんが声を掛けてきた。
っていうか、豊さん(と、豊さんパパと看護士さん)の存在……すっかり忘れてました。
豊さんは、私を見て綺麗な顔でクスリと笑うと……
驚くような事を言ってきた。
「直人さ、見てるこっちが心配するくらい……
仕事そっちのけで探してたんだぜ?
音遠ちゃんのコト。」
「え……?」
──ドキン
は……?
仕事そっちのけで……
……探してた?
誰が?お兄ちゃんが?
誰を?私を?
……まさかぁ!
「ま、コンサートは2日に1日だから……
……止めるのは1回で済んだんだけど。
コンサートすっぽかしてまで音遠ちゃん探しに行こうとしやがんの、アイツ」
「嘘……」
──ドキン
また、心臓が動いた。