私の兄は、アイドルです。
 



ケラケラと笑う豊さんの言葉を、信じられない。


嘘だ。これは嘘。

豊さんの吐いた、変な嘘だ。




「本当本当。
音遠ちゃんって、マジ愛されてるよなー」







──ドキン ドキン








煩い。

煩いよ?







「……豊さん、バカ兄のバカが移ったんじゃないですか?」



私は、ニッコリと微笑みかけた。




「はは、さすが直人の妹……って感じだな?」



意味深な言葉と
意味深な笑み。




まさか。
気付くワケない。

私ですら、まだ分からないんだから。




だからやめてね?

気づかせないで






何も言葉を返せない私。



この微妙な空気を破ったのは……




ガラッ




「おい、バカ音遠!
帰るぞ?家に。」



戻ってくるなりいつもの口調に戻っていた、
お兄ちゃんだった。





……そうして。


私とお兄ちゃんはタクシーに乗り、マンションに帰った。





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