私の兄は、アイドルです。
 



「あーうっせ。お前、今何時だと思ってんだよ。
近所迷惑考えろよバーカ」



くっ……
ハラタツ……!

1人だけ冷静に対応しやがって!

まるで私が悪いみたいじゃん!



お兄ちゃんは、ドアの前でアグラをかきながら悠々と読書を始めた。



こうなったら……


こうなったら……



お望み通り、
その冷たい床の上で一晩中監視してればいいわ
バカ兄がぁっ!




「……おやすみっ」


「はっ、押し弱ぇ奴。
チョロいわ」



私がガバッと布団に潜り込んだ瞬間に何か聞こえた気がするけど……

ってか確実にイヤミ聞こえたけど……



久しぶりの自分のベッドが気持ち良すぎて――




――私は、一気に眠りに堕ちた。









何時間経ったか分からないけど、

夢現(ゆめうつつ)の中で声が聞こえてた気がした。





「──なぁ音遠……起きてるか?」


「……ん……」




話し掛けられた事で
微かに覚醒しかける頭



けど


目は覚めない






「……俺さ?
死ぬかと思った。
お前がいなくなったって分かった時……」



「…………」




声が、聞こえてた気がしたんだけど


お兄ちゃんのハズがない



 
< 95 / 297 >

この作品をシェア

pagetop