霊界のアル ―幽体離脱―

アル

僕はこの世界に飽き飽きしていた。
街で聞こえる人の声にも。
地面に咲いてる花にも草にも。
僕に付いてる【アル】という名前や、
僕から生えてる手にも足にも。
すべてが。もうつまんない。
僕は小さな頃から人と少し違っていた。
みんなはかくれんぼや、鬼ごっこをしたり、じゃんけんしたり、泣いたり笑ったりしてる。
何が楽しいのかわかんなかった。
人が人と接触するのがそんなに楽しいのか、悲しいのか、嬉しいのか。
まぁ 僕がどう思おうと他の人には関係ないが少なくとも昔の僕は彼らを軽蔑していた。
彼らからは何度か接触(遊び)に誘われたことがある。
もちろん断った。目で断った。

僕には嫌いなものと好きなものがある。そう、みんなあるはず。
たとえば僕は 小さな頃から、いや、生まれる前から微生物が大好き。
嫌いなものは目に見えるもの。
埃(ほこり)より大きなものは本当に嫌いなんだ。だってつまんないだろ。
でも鉛筆は好き。先っちょから思いのままの線が出てくるところが面白くてたまらない。

大きくなったら微生物と結婚しようって小さな頃は本気で思ってた。
小さな頃って言っても埃(ほこり)よりは大きかったどね。

そういえば母は僕が何かを口にすると大げさに笑う。もう本当に、口を大きく開けて笑うんだ。狼みたいに。
父さんは僕が通りすがるとたまにグミをくれてた。八歳になるまでね。
そういえば緑のグミの時と黄色いグミの時があった。
「赤いグミはないの?」と聞いたときがある。
その後は忘れちゃった。だってずっと昔のことだもん。

話がそれてしまった。とりあえず僕の事を簡単に説明すると、髪は黒で目はシルバー。名前はアルだ。好きに呼んでいい。
それでは本題に移ろう。まずは初めて出来た友達の話しだ。
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