霊界のアル ―幽体離脱―
………ドコっ…コトっ…




部屋の前で足音がした。母親だ。
僕は急いでコウに隠れるように指示した。コウは小さな声で『了解』と呟くと、僕のベッドの下に隠れた。


ノックの音がする。

『アルー!入るわよー!』
僕も急いでベッドに寝転んだ。
母親はうんざりした顔をして僕の方を観てる。
『また休むの?アル,』
僕はうつろな目で母親を見上げ、咳を無理やり出した。『うん。休む』

母は何も言わず、ため息だけついて僕の部屋を去った。
作戦成功だ。
『おい、コウ!もう出てこい。聞こえただろ。母さんはもう居ない』
コウはベッドの下からモンスターのように這い出てきた。人の体はこんなにくねくね出来るんだなって感心したくらいだ。コウの息が荒い。当たり前だ。あんな狭いところに3分くらい居たんだもん。その間まともに息も出来てないはずだ。
『大丈夫?コウ』
『あはは、へっちゃらさ。ただ、今度ベッドの下、片付けて欲しいかな。肺の中が埃だらけ。』そういいながらコウはポケットからビスケットを出して僕にくれた。
『これ食ったら外出よう。』
『うん!ありがとう。』
僕達はビスケットを食べ終えると隠していた梯子(ハシゴ)で窓から外へ出た。
余談だが、窓から降りる際コウはいつも『よっこらしょ…』っという。大きな声で!
もう少し静かに降りたら?っと笑いながらつっこんだことはあるが、彼は『静かに降りるなんて不可能に近い。物理的に無理だよ。』と言い張った。
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