魔念村殺人事件

　その声には強さが混じっていたためだろうか、それきり章吾は何も云わず、黙って陸の後を歩いた。更に後ろからは、瑞穂、春樹、正信が着いてきていた。

　全員がお茶の間に座ったのを確認した陸は、深呼吸するとゆっくり話し始めた。


「これから私が話すことは皆さんにとって、とても辛い話しになります。でも、この魔念村に来た以上、私には話す義務があるようにも思えます」


　そこで陸は一旦区切ると目を閉じた。

　春樹はそんな陸を見て腹をくくったのだろう。


「どんな辛い話しだとしても聞かせて欲しい。陸には全て分かったんだろう？」


「全てとはいかないけれど分かったことがある。まず、約十年前に行方不明になった美紀ちゃんのこと」


　美紀の真相について、まだ分からない部分もあるが、確かなことだけ話そう。

　春樹達の視線は陸に集中していた。何人かが唾を飲む音さえ聞こえる。


「美紀ちゃんは……おそらくもう生きていない。彼女は約十年前に殺されたんだ」