魔念村殺人事件
「真優ちゃんが殺された後、正信君の証言が引っかかっていました。どうして真優ちゃんがいなくなったことに気付かなかったのか。先程玄関の引き戸を調べましたが、あれほど引き戸の開け閉めする音がするのに、瑞穂さんも正信君も目が覚めなかったというのは不思議に思いました。しかしそれは本当に聞こえなかったのでしょう。
次の日、頭痛がして喉が渇いて目が覚めたと正信君は云いましたね。風邪の引き始め、と云われればそれまでですが、おそらく真優ちゃんも正信君も知らないうちに睡眠薬を飲まされたのでしょう。そして、それが出来るのは瑞穂さんしかいない。それぞれ別の家にいたのですから。ぐっすり眠っている間に犯行は行われた。だから正信君は次の日、ああいった症状が副作用として現れたんではないかと思います。瑞穂さんは細い体格だけれど、柔道の県大会でも優勝したくらいだ。普通の女性より力もあるでしょう。眠っている真優ちゃんを公民館の裏にあるガジュマルの木まで運ぶことは容易だったと思います。車を使えば誰かに気付かれるかもしれない、そう考えた瑞穂さんは、彼女をおぶって運んだのでしょう。そして用意してあった黒いマントを着せ、村のおじいさんの家から盗んでおいた、鴉の嘴に見立てたお守りを胸に刺し、殺したのです。わらべ唄の一番に見立てて……」
「そんな……」
章吾はそれだけ発するのが精一杯のようだった。
次の日、頭痛がして喉が渇いて目が覚めたと正信君は云いましたね。風邪の引き始め、と云われればそれまでですが、おそらく真優ちゃんも正信君も知らないうちに睡眠薬を飲まされたのでしょう。そして、それが出来るのは瑞穂さんしかいない。それぞれ別の家にいたのですから。ぐっすり眠っている間に犯行は行われた。だから正信君は次の日、ああいった症状が副作用として現れたんではないかと思います。瑞穂さんは細い体格だけれど、柔道の県大会でも優勝したくらいだ。普通の女性より力もあるでしょう。眠っている真優ちゃんを公民館の裏にあるガジュマルの木まで運ぶことは容易だったと思います。車を使えば誰かに気付かれるかもしれない、そう考えた瑞穂さんは、彼女をおぶって運んだのでしょう。そして用意してあった黒いマントを着せ、村のおじいさんの家から盗んでおいた、鴉の嘴に見立てたお守りを胸に刺し、殺したのです。わらべ唄の一番に見立てて……」
「そんな……」
章吾はそれだけ発するのが精一杯のようだった。