魔念村殺人事件
「鈴音ちゃんが殺される前まで、彼女が犯人ではないかと疑ったこともありました。でも、結果彼女も殺されてしまった。そして鈴音ちゃんが美紀ちゃんの話しで取り乱し、部屋に戻ってから随分眠っている時間が長いとは思いませんでしたか? 疲れているだけにしては長すぎる。章吾さんの話しでは、揺すっても鈴音ちゃんは起きなかったと云う。そこで鈴音ちゃんは睡眠薬を飲まされたのではないかと考えました。飲ませることが可能だったのは、章吾さんと瑞穂さんだけです。でも章吾さんの場合、真優ちゃんに睡眠薬を飲ませることは出来なかった。真優ちゃんと鈴音ちゃんの両方に睡眠薬を飲ませるのが唯一可能なのは、瑞穂さんしかいないのです。おそらく、お茶を持って行った時、そこで睡眠薬を飲ませ、皆が寝静まった頃、鈴音ちゃんの部屋に向かった。そして用意してあった葉っぱと、章吾さんが置いた食料をばら撒いたのです。そして凶器はまだハッキリと特定できませんが、あの形状から考えるとロープかもしれません。鈴音ちゃんが眠っているように死んでいたのは、本当に眠ったまま絞殺されたからだと思います」


 瑞穂は相変わらずぼんやりと立ち尽くしていた。


「しかし、瑞穂さんが犯人だという証拠は何もありません。全て状況証拠に過ぎない。鈴音ちゃんの絞殺に使われた凶器も見つかっていませんし、警察が来ない以上、鑑識もいないわけですから」


 俺も疲労の色が滲み出ていたと思う。

 いつの間にか、あれほど灰色の雲に覆われていた空は、全てを明らかにするように、太陽がキラキラと輝いていた――。




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