魔念村殺人事件
 陸と春樹は鈴音の云う通り靴のまま上がると、床をギシギシ鳴らせ、鈴音の案内で奥の部屋に向かった。

 中はボロボロで、使えない部屋が左に一部屋、右に一部屋あり、廃屋さながらだが、奥の左は階段で、まだ上れそうだった。奥の右がどうやら皆がいる部屋らしく、鈴音が引き戸を開けた。

 そこには大きな会議室にでもあるようなテーブルがあり、テーブルを囲むようにパイプの椅子に座った四人の男女がいた。他には何もなく、壁は剥がれかけ、ところどころ蜘蛛の巣が張っていた。開けられているガラス窓には亀裂が入っており、今にも割れそうである。そして室内は、空調設備がないため蒸し暑かった。


「おう春樹、お前来ないかと思ったよ。その人は?」


 陸と春樹の姿を見つけ、真っ先に声をかけてきた男は、座っているので背丈は分からないが、見たところ中肉中背だろう。髪は少し長めの茶髪で、黒縁の眼鏡をかけていた。


「探偵さんだよ」


 春樹が紹介するよりも先に、鈴音が嬉しそうに答えた。
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