魔念村殺人事件
「この手紙は? ここに始めからあったの?」


 春樹は封筒を手に取り章吾を見た。


「ああ。俺と正信が来た時にあったし、瑞穂達三人が最初に来た時には、もう既に置いてあったらしいんだ」


 俺は彼らを注意深く見ていると、真優と正信が小刻みに震えているのが分かった。

 ケムンドウとは、そんなに恐れる存在なのだろうか。気が弱そうな二人にとって、ケムンドウの名前で来た手紙には、怖がらせるのに十分効力があるということか。誰が何のためにケムンドウの名で手紙を出したのだろう。最も、彼ら魔念村出身の者達は、ケムンドウから来た手紙だと信じている様子である。春樹は半信半疑というところだろうか。


「お兄ちゃん、春樹来たし手紙開けてみようよ」


 鈴音は好奇心旺盛なのだろう、中身が気になって仕方ない様子だった。

 しかし、章吾は眉間に皺を寄せ、春樹が手に持っている封筒に視線を合わせた。


「ああ、でも六人揃ったらって書いてあるけれど、石川さんは魔念村出身ではないから……。いいのかな。ケムンドウの怒りに触れないだろうか……」


 どうやらケムンドウを相当恐れているらしい。俺は外に出てた方がいいのだろうか。

 そう思って、陸が立ち上がると、春樹が腕を掴んで再び椅子に座らせた。

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